商業登記
- 株式会社で、代表取締役である父が高齢となったために、息子を代表取締役に選任して短期間の予定ですが二人の代表取締役を置く状態したいのですが、代表者の印鑑は、どうなるのですか。
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まず、両者ともに印鑑を法務局に届け出でするのか、どちらかひとりだけか、を決定してください。
管理上の容易さから、どちらか1人だけ、たとえば「1個だけ」「息子だけ」ということを前提とし、もし、父親の使っていた代表者の印鑑を息子が使うということであれば、父親の印鑑につき廃印届け、息子につき印鑑届け(父親の使っていた代表者の印鑑で)を同時に法務局に届出、ということになります。(二人とも同じ印鑑を代表者の印鑑とすることはできません)
また、印鑑が、すり減ってしまって、この際新しくするということであれば、父親の印鑑につき、廃印届け、息子につき印鑑届け(新しく作った印鑑で)ということになります。
なお、父親の使っていた印鑑カードを息子が継続して使用することも可能です。
- 株式会社の設立ってむずかしいのでしょうか。
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発起人、商号、目的、役員、出資者(発起設立が現実には多いので、その場合、発起人全員が全株主となります)を決めていただければ、むずかしいことはありません。
ただ、出資金の払い込み(発起人総代個人の預金口座に)には少し注意が必要です。「定款の作成日」以前の払い込みはできません(「定款の認証日」以前ではありません)。たびたび、先行して払い込みがされる例がみられます。依頼人に周知徹底を計っています。
- 株式会社の役員の任期を3年間(選任後3年内の最終の定時総会の終結まで)とすることはできますか。
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取締役については可能です。
株主総会を開催して任期を3年間(選任後3年内の最終の定時総会の終結まで)とする定款変更決議をすればできます。
ただ、監査役については定款変更してもできません。監査役の任期は、会社法上4年間(選任後4年内の最終の定時総会の終結まで)とされており、その規定は強行法規とされていますので、その定款変更決議は無効です。
- 株式会社の増資(「募集株式の発行」)を簡単にすることはできますか。
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「簡単」にということが、日数がかからないという意味であれば、募集株式の総数引き受け契約を会社と引受人とで締結する方法ですれば比較的短期間でできます。
募集株式の発行手続きは、募集事項の決定、申し込み、割り当て、払い込みという段階を経て行われますが、会社法上、総数引き受け契約の締結に関しては、申し込み、割り当ての規定が適用されないため短期間でできることになります。
また、払い込みも、金融機関に払い込む方法の他に、会社の預金通帳に払い込む方法もあり、より簡易にできます。
また、第三者割り当てとし代表取締役の会社に対する貸付金を現物出資して、募集株式を発行するする方法は、払い込む必要もなくさらに簡単に募集株式の発行ができます。債務の株式化と言われています。 - 株式会社の事業目的を変更するにはどうすればいいのでしょうか。
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株主総会を開催して、定款変更をすればOKです。
会社は通常事業目的の範囲内において権利義務能力をもつとされています。目的の範囲外の会社の事業活動行為はその会社の事業活動行為とはみなされず、会社構成員個人の事業活動行為となってしまいます。
事業主の方で、今している事業活動行為が定款に存在しないということでしたら、速やかに株主総会を開催し、定款変更決議をしてください。もちろん、その登記申請も必要となります。
- 既存の株式会社を農業生産法人にできますか。
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ご質問の背景には、農地を株式会社で取得したい、ということがお有りかと思われますが、残念ながら現実的にはほとんど不可能と思われます。
そもそも、農業生産法人とは、株式会社の商号中に農業生産法人という用語を加えれば農業生産法人になるという訳ではありません。
また、「農業生産法人」という「認定書」を公的機関が発行する訳でもありません。株式会社が農業生産法人として存続するには、農業及びその関連事業を継続的してできるか、ということが常時問われることになり、そのガイドラインがインターネット上でも数々の農業委員会で示されています。それらに依れば、大まかに分けて3つの条件があり、先ず農業及びその関連事業の売り上げ高が会社事業全体の過半を占めること、次に、株主(構成員)は農業従事者や農地提供者等でなければならないこと、3番目には現実に取締役(業務執行する役員)の過半数は農業従事者でなければならないことなど、以上の条件を満たすことになる既存の株式会社はほとんどないと思われます。
いずれの条件も農業従事者以外には農業特区でもないかぎりは極めてハードルが高く、ことに、第一番目の条件にいたっては直近3カ年の売上高を判断基準とするとされており、農業実績のない株式会社が農業に新規参入する道は、農業生産法人としては閉ざされていると言わざるを得ません。
以上、ご質問に対する回答としては、既存の株式会社のほとんどが農業生産法人とは認定されず、従って農地も取得できない、というのがほぼ適切な回答になろうかと思います。
法人登記
- 医療法人の「理事」の変更登記は必要ですか。
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必要ありません。通常であれば医療法人の役員の登記事項は理事長(住所、氏名、就任年月日)だけです。
ただ、理事長も理事としての任期が満了すると、理事長の資格を当然失うことになります。従って、理事の任期は通常は2年間ですので2年毎に理事及び理事長を選任選定しなおし、理事長だけは登記申請することになります。
ただ、現実に散見する問題として事業年度の末日が3月31日であるにもかかわらず3月中に総会、理事会を開催して理事及び理事長を予選してしまい5月末に就任したとして登記申請したいとする依頼人の要望には問題があります。予選が早すぎるという問題以上に、理事の一部に交代的変更があるのにもかかわらず理事長を予選してしまうという部分です。
長年続いてきた3月開催(理事会及び総会)の慣例を一度にかえることは難しいとは思いますが、5月末に理事選任の総会を開催し新理事就任後直ちに理事会を開催し理事長を選定すべくシフトの変更を計るべきと考えています。 - 社会福祉法人の資産の総額の変更登記は毎年しなければなりませんか。また、いつするのですか。
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毎年しなければなりません。
3月31日が事業年度の末日となっている法人がほとんどですが、3月31日現在の資産の総額を登記申請しなければならないため3月31日から2週間以内登記しなければならないとお考えになっておられる依頼人がたまにいらっしゃいますが、法人運営の関係上では不可能に近いと思われます。周知のとおり、その事業年度の資産の総額は、総会で承認されてはじめて確定されます。
通常であれば5月末に総会が開催されますので総会で承認されたらその日から2週間以内に登記申請するということになります。
なお、公益法人制度改革三法における社団法人、財団法人には、一般か公益かにかかわらずこの登記義務はありません。 - 一般社団法人の役員の任期について、教えてください。
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まず定款をごらんになってみて下さい。
簡単にいえば、「理事も監事も、選任されてから2年内に終了する最終の定時総会の終結まで」となっているか思われます。
以前のようにキッチリ2年間というのではありません。株式会社の役員の任期と似ていますが、監事(株式会社では監査役)については異なります。
株式会社が4年間(選任後4年内の最終の定時総会終結まで)を短縮できないのに対し、一般社団法人では、短縮が可能となっており2年間(選任後2年内の最終の定時総会終結まで)とすることが定款上一般的になっています。
理事及び監事の任期期間の足並みを揃える趣旨であるとされています。