「不動産登記」についての理念
Global Standard(国際基準)で、より正確で安全な取引を目指ざす。
当事務所は、1967(昭和42年)創業以来55年間に亘って一貫して実践してきたことがある。それは、「裁判に勝てる登記」を標榜してきたことである。登記手続きは、単なる事実行為としての事務手続きであるので、通常においてはなんら紛争は生じない。
しかし、いったん当事者間に契約内容等において紛争が生じると、第三者対抗要件の手段としての登記の真実性が大変重要な要素になってくる。不幸にして訴訟に発展したとき、クライアントの利益と権利を擁護するのに何が一番大事かと考えたとき、それは「裁判に勝てる登記」ではないだろうか。
裁判上の終局の事実認定のための、登記手続きを物権得喪変更の証拠保全手続きであると位置づけるために、依頼者の決済取引に立ち会う際、「人(当事者)」・「もの(不動産)」・「登記意思」の3つの確認を誠実に行ったうえで、本人に自署してもらう方法を採ってきた。今ではごく当然のことであるが、55年前に採用したのは勇気のいることであった。結果として、今まで一件の事故(訴訟)もなく本日に至っている。しかしこんなことで満足していてはいけない。
いまや、司法書士にもGlobal Standard(国際基準)が求められている時代である。これからの不動産取引に要求されることは「より正確で」・「より透明度の高い」・「より安全性の高い」取引と登記手続きをセットにしたものだと思う。不動産取引をシステム化することにより、これからは司法書士が「決済時」立会のみならず「契約締結」から関与することで、より正確度の高い登記手続きが可能になると考えられる。アメリカのエスクロー制度とその中身であるプラン・ドウ・チェックを志向することでクライアントのために、正確で安全な取引を目指していく所存である。
2014.7.1.
犯罪収益移転防止法施行
本人確認と本人の登記意思確認がさらに一層強化されました。
犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」)が施行され、司法書士の持つ社会的責任を更に自覚しなければならない時代となった。法律上有効な登記手続きであることに加えて、さらにそれが社会防衛上許容されたものであるのかの判断までも求められていると言える。困難な問題である。
不動産登記に関わる犯罪という側面において、本人確認と本人の登記意思確認の徹底が、犯収法の想定する犯罪収益の芽を摘むことに大きく貢献するだろうという点については議論の余地は全くない。問題なのは、「手段は合法、目的は違法」とでもいうか、合法的にされた登記手続きが、実は、犯罪組織またテロ組織の巧妙な犯罪資金源の道具とされる可能性である。
一司法書士事務所とすれば自ずと限界はあるが、ともあれ、我々は自身の足下から取り組むべきである。本人確認と本人の登記意思確認をさらに徹底し、当事務所の標榜する「裁判に勝てる登記」を全うすること自体が、結果として、犯罪組織またテロ組織の資金源のゲートキーパーとしての役割を担っているものと考える。ますます、身を引き締め職務に精励する所存である。
H20.3.1施行